scene.2

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 ドアが閉まって、ため息をつきながら壁にもたれる。  服が擦れて、ズズッと小さな音がした。  さっき言ったのは、嘘でも強がりでもなくて、本当。  わたしは陽に対して、好意なんて一切持っていなかったし、むしろ苦手だった。  同じ営業部といっても、事務のわたしとは違って、陽は基本外に出ていることが多くて、数えるほどしか喋ったことがなかったし、 いつも誰にでも良い顔している陽を、嘘っぽいと思っていたから。  それでも、あの夜一線を越えたのは、陽だったからだと思う。  その理由は、自分でも最低だと思うくらい、単純で明確。  陽が、顔が良くて、遊び慣れていそうで、上手そうだったから。  それと、身元がはっきりしてたから。  わたしは初めてだったから、さすがに見ず知らずの人とは無理だと思ったし、どうせなら顔が良くて上手な人が良いと思った。
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