239人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアが閉まって、ため息をつきながら壁にもたれる。
服が擦れて、ズズッと小さな音がした。
さっき言ったのは、嘘でも強がりでもなくて、本当。
わたしは陽に対して、好意なんて一切持っていなかったし、むしろ苦手だった。
同じ営業部といっても、事務のわたしとは違って、陽は基本外に出ていることが多くて、数えるほどしか喋ったことがなかったし、
いつも誰にでも良い顔している陽を、嘘っぽいと思っていたから。
それでも、あの夜一線を越えたのは、陽だったからだと思う。
その理由は、自分でも最低だと思うくらい、単純で明確。
陽が、顔が良くて、遊び慣れていそうで、上手そうだったから。
それと、身元がはっきりしてたから。
わたしは初めてだったから、さすがに見ず知らずの人とは無理だと思ったし、どうせなら顔が良くて上手な人が良いと思った。
最初のコメントを投稿しよう!