scene.2

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「はい」  拾おうと屈んだわたしの目の前に、差し出された青のキャップ。  誰が拾ってくれたかなんて、見なくてもわかる。  低めの甘い声と、ムスクの甘い匂い。  顔を上げると、笑顔の陽が手を差し出していた。  その笑顔が三ヶ月前のあの夜と同じで、思わず見入ってしまう。  陽は固まったままのわたしの手の平を上に向かせると、その上にぽとんとキャップを落とす。  その後、顔を近付けてきたから、甘い匂いがさっきよりも濃く鼻を掠(かす)めた。
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