妄想痴漢列車2―変態な俺の初めての夏休み―

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 鳴らない電話が鳴ったのは、その日の夜十時を回ってからだった。  驚いて飛びつくみたいに液晶見て、そこに出てきた名前を見て妙に心臓ドキドキした。  シンプルな画面にでかでかと『和樹』の文字がある。  深呼吸を何回かして、俺は気合いを入れて電話に出た。 「もしもし…」 『あぁ、よかった起きてて。なかなか出ないから寝たのかと思った』 「寝てないよ」  緊張してアタフタしたなんて事は言いません。 『そっち、どう?』 「どうって?」 『寂しい?』 「!」  少し意地悪な『寂しい?』の問いかけに、俺の心臓が跳ねる。  寂しくなんて…あります。 『亮二、ごめんな』  無言になった俺の気持ちを察してくれるみたいに、和樹が申し訳なさそうにしている。  分かってるから、平気だって。去年もこの時期いなかったもん。 「部活なら、仕方ないよ。水泳部のエースだろ? そりゃ、忙しいよ」 『亮二』 「俺は大丈夫だからさ、しっかりやってこいな」  強がりだけど、本当は一緒の夏休みをどう過ごすかとか浮かれてたけど、叶わなくてふて腐れもしたけれど。でも、仕方がないのも本当。俺は和樹の応援はしても、引き留めはしたくないし。     
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