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鳴らない電話が鳴ったのは、その日の夜十時を回ってからだった。
驚いて飛びつくみたいに液晶見て、そこに出てきた名前を見て妙に心臓ドキドキした。
シンプルな画面にでかでかと『和樹』の文字がある。
深呼吸を何回かして、俺は気合いを入れて電話に出た。
「もしもし…」
『あぁ、よかった起きてて。なかなか出ないから寝たのかと思った』
「寝てないよ」
緊張してアタフタしたなんて事は言いません。
『そっち、どう?』
「どうって?」
『寂しい?』
「!」
少し意地悪な『寂しい?』の問いかけに、俺の心臓が跳ねる。
寂しくなんて…あります。
『亮二、ごめんな』
無言になった俺の気持ちを察してくれるみたいに、和樹が申し訳なさそうにしている。
分かってるから、平気だって。去年もこの時期いなかったもん。
「部活なら、仕方ないよ。水泳部のエースだろ? そりゃ、忙しいよ」
『亮二』
「俺は大丈夫だからさ、しっかりやってこいな」
強がりだけど、本当は一緒の夏休みをどう過ごすかとか浮かれてたけど、叶わなくてふて腐れもしたけれど。でも、仕方がないのも本当。俺は和樹の応援はしても、引き留めはしたくないし。
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