来訪者の影

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来訪者の影

東京都新宿歌舞伎町にあるコンビニ。 日本で一番危険だとされているこのエリアのコンビニには、バイトの裏の手当として 危険作業手当なる項目がある。 これは、怖いお兄さん方からの、各種問題や課題に対しての手当と、あとたい? 何とかに関する、手当項目だと、バイト面接時に高梨夕貴(たかなしゆうき)は、聞いていた。 ただ、何か詳細は分からないけど、その分時給が上がっているので、特に詳細な事は 聞かずに、面接に合格して、現在働いている。 幸いなことに、怖いお兄さんからの各種問題や課題は今のところはなく、今では 常連の強面のお兄さん方と、気さくに話せる関係になっており、天職では無いかと 思い始めていた。 いつもの夕方のシフト交代の時間に、コンビニの10畳程の事務室で、20代後半で インディーズバンドのボーカルをしている、優男風の四谷太郎(よつやたろう)先輩が、ぎこちなく髪を上げながら早口で 「高梨・・・今日、深夜二時に三杉さんという人が店に来るから、来たら、店内トラブルがあったという事で、三杉さん以外を、店から出して、シャッターとカーテンで店内を閉めて欲しいんだ・・・」 「そんな事、店長から聞いていませんが・・・・」 怪訝そうな顔をする高梨を見ながら、四谷は、頭を掻きながら、ため息をついた。 「初回面接の時、店長話していなかった?何故、うちが時給が高いかって・・・」 首を傾げながら、高梨は面接時の事を思い出し答えた。 「危険手当の事ですよね・・・・怖いお兄さん対応と・・・たい何とか??」 「たいま手当ね・・・」 「麻薬のあれですか??」 「いや・・・・魔を退治する、退魔ね・・・あと宜しく!」 四谷は、エプロンを脱ぎ、一刻も早く帰ろうとする。 四谷先輩は、普段は優しいのだが、面倒な案件に関しては 極力無関心を装う癖がある。 「四谷先輩・・・意味分かりませんよ・・・なんでこのコンビニが退魔と関係が・・・」 「俺は・・・何も知らないし・・・・ただ店長から手当の件、言われただろうから・・・・」 急に早口になり、エプロンを仕舞うと、高梨の制止も聞かずに、扉を強く閉めて出て行った。 あからさまに怪しい対応に、不安に思いながら、店内から来客の音が鳴ったので店内へと急いだ。
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