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いつもの世界
早朝、いつの間にか事務所で寝ていた高梨を起こしたのは、早瀬鈴であった。
「高梨さん、倒れたみたいで・・・事務室に運びました」
相変わらず事務的な受け答えであったが、時間もシフト終わりを示していたので
日報に、疲労で倒れた旨を記載しながら、店内に戻り、お客さんの居ない店内を
確認しながら、何か大事なことを忘れた様に感じていた。
帰り際に、早瀬に挨拶をすると、普段、持っている猫のイラストの入ったペンでは
無く、イルカのペンに変わっていたのに気づいた。
「いつも猫のペンだったけど、新調したの?可愛いね」
何気なく質問したが、早瀬鈴は微笑んで答えた。
「大切な人を護ったので、新しい物を作りました」
高梨は、意味不明に想いながら愛想笑いを浮かべた。
「笑ったほうがいいよ・・・早瀬さん・・・」
何か心に引っかかりを覚えながら、高梨は帰路についた。
早瀬は、高梨を見送ると、レジの下から、三杉千影の名刺を出した。
「いつか・・・お会いする機会があるかも知れません、三杉千影さん」
早瀬鈴はつぶやいた。
コンビニ業界は、そのスピードの商品速さと、展開力から、多方面の業界の魔や商品の魔を受けやすい存在になっている、その魔が溜まると異世界のゲートが開く、特にこの新宿歌舞伎町は人が多く、商品が魔物と化す、これはコンビニ業界成立時に、予測された結果である。
現在も、全国のコンビニで異世界化の前兆が現れれば、三杉家と、早瀬家、藤佐和家の3代家での退魔を行っている。
皆さんもいつかどこかで、コンビニ専門の退魔師に遭遇するかもしれません。
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