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ご主人の母親だった。ちなみにご主人は三人姉妹の長女だが、ひとりだけ独身。次女はふたり子供がいる。三女は最近離婚したそうだ。
「なに、また批判?」
『批評というらしいよ。いいじゃない。身内の意見の中にも見るべきものもあるでしょうよ』
お母さんは、ご主人が週刊文春の編集長になってから、毎週日曜夜に電話をかけてくるようになった。電話の中身は驚くなかれ、雑誌の批評である。
「今度は何? そんな大きい事件ないけど」
『ひと頃に比べると本当に上品になったね。いいことじゃん』
「まあ、あの頃はツイッターで、
『オヤジ向け雑誌は、表紙に文字が少ないければ少ないほど硬派だと思ってたのに』
なんてツイートもエゴサして目撃したけどさ」
就任当時は『文春はこんなゴシップ雑誌じゃなかったのに』というツイートも見つけたらしい。まあ、政界のスクープは車のボンネットに乗っかってまで撮るカメラマンも、かつてはいたらしいけど。
『首相の追及は続けなさいよ』
「はーい」
楽しそうだよなあ。というのは僕にだってわかる。
『ところで相変わらずぬいぐるみとか集めてるの? うさぎ』
「集めてるよ、グッズもぬいぐるみも。唯一の趣味だもん」
心なしかご主人、頬を膨らませてるように見える。
『子供のころ我慢させ過ぎたのかね……彼氏はなんて言ってるの?』
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