ケータイストラップは見た! 週刊文春女性編集長編

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「ただいまー! 寂しくなかった!?」  彼女が大きな声をかけても、彼女の耳には誰の声も返ってこない。聞こえない。  ここは彼女のひとり暮らしの部屋。 『帰ってきた!』 『おー、おかえりー』  という声は、彼女には聞こえない。僕には聞こえてるけど。  ここにいるのは、彼女以外には、とある大手ファンシーメーカーのキャラクターをかたどったぬいぐるみを中心にした、うさぎのぬいぐるみばかりである。ぬいぐるみの数が三桁に乗って久しいらしい。  壁一面、うさぎのぬいぐるみ。  実は僕も、このキャラクターの姿をしている(筈なのだ)のだ。  先述したが僕は、ケータイストラップというヤツである。  これに驚いて欲しくて、僕の自己紹介を奥歯に何かが挟まったものにさせてもらったんだ、ごめんね?  人間以外となら、テレパシーで遠く離れたものとも、いろいろなものと話ができる。メーカーが違うものは基本R違う言語のようなものなのだが。だから、ケータイストラップである僕も、努力の末にぬいぐるみと話ができる。 『誰だかわからないけどただいまー』 「おかえり」と言ってくれたぬいぐるみに挨拶を返す。 『聞き分けつくようになってよ!』 『ごめんよ。100人の周波の聞き分けは難しいよ』     
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