ケータイストラップは見た! 週刊文春女性編集長編

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「なんだ」 「子供を産むか堕ろすか、早く決めないと堕ろせなくなるからね、それだけは忘れるなよ」 「あーい……」  という会話を終えた時にデザートのアイスクリーム(フランス語でなんていうか僕は知りません)が届いた。       (4) 「お待たせ!」 「5分遅刻」  新聞らしい、ガサッという音がした。 「寝坊したんだってばー」  良い解決策が見つからないまま、ビストロを後にしたご主人は、その次の土曜日、彼氏との待ち合わせに行った。  カレは無表情で、読んでいた新聞をたたんでいる。 「行こうぜ。映画始まっちまう」 「待ってよ喉乾いたー」 「映画館でコーラでも買おうぜ」 「待ってー」  友達の前とも編集部とも違う、甘えた声が御主人から漏れる。  映画館、コーラとサンドウィッチを買って席に着くとご主人は、僕を取り出しあるボタンを押した。  しばらく音が鳴らないで済むぞ……  スマホの電源も切っているようだ。  それからご主人は、このガラケーの電源を、彼と別れるまで入れなかった。  彼氏に、 「スマホばっか見てないで」 「わかったよ」  とふくれっ面をしていそうな彼氏。 「ねえ」  と言ってご主人は首を彼に倒した。 「うん?」 「ユウのカラダに、触りたいな」     
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