ケータイストラップは見た! 週刊文春女性編集長編

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ケータイストラップは見た! 週刊文春女性編集長編

       (1) 「はい、これはこれで行きましょう」  彼女に言われた若手編集者がホッと胸をなでおろしていそうな空気が伝わってきた。  続いて、彼女はフロアを歩き回り、 「ウエダさん、クドウさんの今週号分入った?」 「はい編集長、入ってます」  更に進み。 「ミヤノさん、特集出来てるわよね?」 「すみません、あと少し」  離れた席から大声が聞こえた。 「30分待つわ」  今は近未来、20××年。  ここは「週刊文春」の編集部だったりする。  語りを務める僕は、今編集長と呼ばれた彼女のケータイストラップ、とだけ自己紹介しておくね(この作者に「ぬいぐるみは見た!」って短編小説のシリーズがあって、この小説はその仲間です)。  ビジネス用はスマホだが、プライベート用はガラケーだ。  彼女は、なんと、「あの」週刊文春史上初の女性編集長なのだ。  もともと文春は半数くらい女性読者だったが、彼女が編集長になって硬派をやや取り戻したような感じ、と好評だそうだ。  30分経った。 「ミヤノさん?」 「はっはい!」  呼ばれた編集者の声がすると、靴の音が鳴り始めた。いつも彼女は5センチヒールだ。また編集者の机に向かっているらしい。     
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