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にわかには信じがたいこの開発計画に私は強く興味を抱いた。それは単に好奇心が働いたがゆえのことでもあったが、それとは別にもう一つ大きな理由があった。既に男里を離れて久しい私ではあったが、自身の生まれ育った町に強い愛着をもっていたものだから、郷里に関わるこの大ニュースが気になって仕方がなかったのだ。
私自身の話をしよう。
男里で育ったと書きはしたが、実際のところ私はこの生まれ故郷のすべてに慣れ親しんでいた訳でもなかった。私が当時住んでいたのは男里の中でも北部にあたる地区であり、もっぱら生活圏もそこに限られていたからだ。
他と比して田畑が多いともいえない北部ではあったが私の家の近所にはそれが豊富に広がっていた。初夏ともなれば夜な夜なカエルたちの大合唱が外から響いてきてこれが大変にやかましいと感じていたものなのだが、今となっては懐かしさを覚えてしまう。
そしてまた、私には他にも懐かしさを感じずにはいられない音があった。いつもその音は遠くのほうから近づいてきた。最初こそ控えめな音なのだが、やがて私の家の近くへと接近してくるのに比して音は加速度的に尋常ならざる大きさへと膨れあがっていく。そうしてついには雷鳴の如き轟音が私の家を含めた近隣一帯を包みこんでしまうのだ。
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