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考えなくていいことはたんたんと
私は履歴書を書いていた筆を止め、部屋の片付けを始めた。
引越しの荷物をほどき、新しいクローゼットにしまい込んだ。自暴自棄になりつつも、部屋の片付けや家事などは生来嫌いではなく、気分に左右されずに淡々とこなす事が出来る。
通勤に便利な様に、会社の近くで独り暮らしをしていたのだけれど、退職後は、元同僚に出くわすのが嫌で引越しをすることにした。
引っ越しの手配も、部屋の片付けも、さらさらと日常業務の様にこなす自分を、本当に傷心の身であるのだろうかと疑いさえした。
でも、いつかはやらなければならないのは間違いないのだから、こんな時には都合が良い。
でも、就職も同じように、いつか必ずしなくてはならない。なのに、どうしても、前向きに挑む事ができない。
それは、やめてしまった仕事と、そこで一緒に働いていた彼との別れを決定的にしてしまう様な気がしたから……。
わかっている。おかしな話しだということも。
引っ越しは出来て、履歴書は書けない……。
実は、きっとわかっているのだけれども、どうしても、認めることが出来なかった。
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