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「こんばんは、太一。でも、悪いけど待ち合わせなんだ。だから、あんまり時間ない」
「何時に約束しているんだい?」
「え? すぐよ、すぐ。もう、約束の時間過ぎてるのよ、ええとほら! もう、九時
過ぎてるでしょう。だから時間ないの」
「ずいぶん過ぎてるね。もう九時二〇分だよ。ゆったりな人なんだね。じゃあ、それまで暇つぶしに付き合ってあげるよ……気にしないで、僕は時間があるんだ。そういえば、見たいと言っていた映画なんだけど、さっき一人で観に行ったんだ、でも――」
計算外だ……しかし、思い返してみれば、太一と話していて計算通りに行った試しがない。
バカすぎるから、いつも、想定外の返答をしてきて、私はいつも、ペースを乱される。これから死のうとしている人間が、こんな能天気な会話をしている場合ではないのに……もし『ある人物』が現れて、座る席が空いてなければ、一体どう言う結果になるのだろうか。
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