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残りの時間 輪廻
突然消えたのが夢の中の話だったような電話の声に、
直ぐ応えることもできず。
それでも、仕事の後、桜のいうままに会うことになった。
焼け木杭に火、とはよく言ったもので、
桜と俺は会って直ぐ元の鞘に収まった。
毎週決められた日に、用事を作り、県外のランクの比較的高いホテルにチェックインする。
桜は自分のことを一切俺には伝えずに、俺に快楽のみを与えていった。
そして、同時に心の奥にしまった筈の割井の ことも、思い出すことが確実に増えた。
不倫という始末の結果。
離婚そして、桜との再婚。
再婚した桜には3歳の男の子がいた。
誰の子とも問うこともせずに、始められた新しい生活。
血の繋がりのない2人の子どもと、桜と
4人の生活は、思いもかけず、楽しく優しい時間を俺にもたらした。
そして、病に伏した桜との死別。
遺された2人の子どもと桜を送ったその日に、弔問に訪れたのは
見違えるほど、大人の男になった
割井 俊だった。
かつてのくだらない芝居の原因。
俺の初めての恋。
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