終章 この章では、犯人の動機が指摘される

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『ああ。重犯者という題名ですが、これには重い罪を犯すこと。罪を犯し重ねること。二つの意味が見出せますね。どちらもあなたに当てはまりますね。そしてそれらの罪に対する罰は、あなたにとって非常に重い物でしょう』  進藤の独白を聞いた梓は、二の腕が鳥肌をたてていることに気がついて、強く擦った。店内の冷房が効きすぎているわけではない。  まるで、これでは進藤が芽室を自殺させるために、芽室に会ったようなものではないか。彼による芽室への追及は苛烈で、そしてサディスティックだ。いたぶることを楽しんでいるかのような。  司法によって裁き難いと判断した進藤は、芽室に自らを裁かせたのだ。  でも、なぜ?  なぜ進藤はそのような行動に出たのだろう。 「分からないんだ。なぜそんなことをしたのか。奴はくだらない理由で君達の叔父を殺害し、恋人に罪をなすりつけようとした。逮捕されても動機を語らず、犯行は否認し続けた。梓ちゃん、それだけじゃない。行雄や、奈津子さん、明愛梨さんを傷つけた。けれど奴は罰を受けるかも分からない。その時、自分の中にどす黒い感情が湧くのを感じた気がする。あれだけ事件とは距離を置いていたのにね。分からない……」  最後の方は消え入るような声だった。  なぜ自分がそのようなことをするに至ったか、進藤自身は分かっていないという。しかし、梓はそれがはっきりと分かる。  口では事件に興味がないと言ってはいるが、論理的にはそうであっても、心理的にはそうではなかったのだ。そして、なぜ進藤が自分にこのような告白をしたのかも分かる。  梓は十字架を握りしめた。  告白することで、殺人の罪に対する赦しを得たいのだ。けれどそのことも、おそらく彼は気づいていない。  初めて進藤と会った時、梓は彼の容姿を死神のようだと形容した。悪人とはいえ一人の人間を死に追いやった彼は、まさに死神だ。  進藤は、顔の前で合わせていた手を握ると項垂れた。  それは祈りの姿に似ていた。                                       (了)
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