止まった針

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 そんな出会い方だったから、友人たちも私たちが付き合っていることも知らないだろう。付き合っているとは表向きだけであって、結局たまに会って話す程度の仲でしかないのだが。  出会ってからその付き合い方を彼は崩すことはなかった。デートとはよく言ったものだが、キスはおろか、手も繋いだことも今までなかった。  世間でいわれるプラトニックな関係、というのとはまた違う気がする。純愛という考え方が、男女という関係から無理矢理に引き剥がそうとしている気がしてもともと好きではなかった。  それに、私たちはただ互いに踏み込めずに、何を話していいかわからず、それでも何となく一緒にいて心地よい空間を求めて側にいたに過ぎない。そんな時間が長らく続いただけだったのだと思う。  雨音は未だ緩む気配を見せない。  河川の水量が先ほどよりも増しているようにも見えた。短い間だというのにかなりの雨量だった。濁った水が勢いを伴って流れていく。ここの川は広くないので大雨で氾濫しそうになることがたびたびあった。     
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