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「最後の恋だなんて、嘘じゃない。貴方はいつもいつまでも恋していなきゃいられないんでしょう? だって、恋なんてそんなに永遠に続くものじゃないもんね。私だって貴方に恋していたかどうかなんて分かんないくらい、もう昔の話だし」
言葉と共に感情も涙も一緒に零れ落ちて行く。だけど、気にせずに続けた。
「結婚してみたら恋なんて一気に冷めるよね。だって、優しくて博識で素敵だと思っていても、蓋を開けてみたらお腹の出たただの中年だし、こんなに年が離れているのに意外と子どもっぽいことで機嫌を損ねたりして面倒くさいし。透の存在だって、結婚の話がかなり進んでから出して来たよね。透が可愛いかったから気にならなかったけど、だけど、普通に考えてみたらずっと嘘をついていて、元々そういう嘘つき体質だったんだよね?」
彼はただ、私の顔を真顔で見ていた。言葉をきちんと噛みしめているのか、ただ私の顔を見ているのか分からないけれど、とにかく私の目を真っ直ぐ見て、感情的に話している私を無言で見ていた。
「私はバカみたいに何でも信じるから、騙すのも簡単だったよね? 透を育てて家事もしてくれる、家政婦さん代わりに私と結婚して、自分は好き勝手に恋をし続けたかったんだね。だけど、結婚ってそういうものじゃないでしょ? 私だって貴方への恋心なんてもう何年も前に無くなっていたけど、それでもたったの1回だって裏切ったことはない。精神的な面でさえ1度も無いよ。恋なんかしてなくても、貴方のことをずっと愛してきた」
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