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そこまで言い切ると、私は恵一に背中を向けてドレッサーの上にあるティッシュを1枚取るとギュッと涙を拭いた。そして、もう一度化粧水を大量に手に取ってパンパンと頬を叩いた。
彼がどんな表情をしていたのか、もう見なかった。
中学2年生になっていた透と最後に話した時、思春期の年齢だったはずの透は、それでも涙を流して私と一緒に行きたいと言った。
それを恵一は強く阻んだ。
親の離婚を……しかも、恵一の身勝手な行動のせいで透まで犠牲にしてしまった。そのことが一番残ってしまって、後味の悪い別れ方だった。
「幸子はまだ若い。やり直してくれ」
最後にそう言われた。
自分はもっと若い子たちと遊んでいるくせに……。
そんな気持ちしか残らなかった。
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