158人が本棚に入れています
本棚に追加
2時間くらい経った後、主人が帰宅した。
「本屋さんに行っただけのわりに、随分と遅かったのね」
私が細く微笑むと、主人は「急にコーヒーが飲みたくなったから」なんて、まるで誤魔化すように笑った。
「読めたのか?」
「それが、読めていないの。彼が亡くなったってところまでは読んだんだけど」
「……そうか」
暫くの間、お互いに何も言わずに、ただリビングのソファに座って、つけっ放しのテレビが流れているのを眺めていた。
「あのね」
おもむろに私が口を開いた。
「昔にもね、一度だけ透から手紙を貰ったことがあるの」
*** ***
それは、離婚が成立してから2~3ヶ月くらい経った頃だった。
私は実家に帰っていたけど親との折り合いが良くなく、いつも親とは顔を合わせないように生活をしていた。
そんなある日、透からの手紙が私の机の上に置かれていた。
最初のコメントを投稿しよう!