3・30年目の手紙

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 子どもが出来ない理由は幸子では無かった。  あの頃、検査をしたね。子どもが流れてしまう理由は俺の方にあった。  子ども好きの幸子は子どもを欲しかったのを知っているし、俺は幸子との子どもが欲しかった。  だから、幸子がもういらないと言う度に、それが辛いからという諦めであって、本当に欲しくないという意味では無いのを知っていた。だから、諦めずに頑張ろうと言い続けていた。  だけど、そんな幸子を苦しめていたのは自分だと知った時、ただ年上なだけで確実に将来一緒に年を重ねて行けない俺は、どうやって君を幸せにしていけるのか分からなくなった。  その方法が無かったわけでは無いかも知れない。  だけど、まだ若い幸子にはもっと他の人がいるんじゃないか、そのチャンスを俺が奪っているのではないか、その想いでいっぱいになった。  浮気をしたのは本当だ。  君が最も許せない方法でないと、優しい君は俺と別れてくれないだろう、それが分かっていたから。  1人だけだったら許されてしまうかもしれない、そう思って、何人ものどうでもいい若い子と浮気をした。
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