過去

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「(夏休み、始まってんだろな)」 通院の日々は続く。 朝はコンソメの元に湯を注いで飲み、薬も飲んで外へ出る。 今年はいやに涼しい。最高気温32度じゃなかったのかよ。 クーラーの空音がする控え室。 通院14日目の今日、珍しい先客がいた。 「おはようございます。」 「おはようございます。」 黒目がちな瞳に墨のような髪、薄手のジャケットは灰色。 黒で統一されたなんとも夏に不向きな格好。 それも同じのが二つ。 「…はよざぇます」 呟いて、隣のソファへ向かう。 「いま、なんて。」 「…あぁ?」 生意気に声をかけてきやがった。 しかし誰なのか分からない。 幼い双子がいた。 初めて見た。 「ぼくはあなたに、おはようございます。といったはずだ。だが、あなたは、なにもいっていないように、きこえたのだ。」 句切るように話すのは、右の奴のようだ。 「…っせーな」 我ながら態度が悪過ぎる。 しかし餓鬼に構う筋合いはない。 ただ、年下に叱られたという事実が気に食わない。オレは顔も向けずでかい声をぶつけた。 「幼稚園児が中学生に説教してンじゃねぇよ」 苛々していた。 薬を飲むようになってから気が荒れていた。 「なら、あなたはいくつなのだ。」 「14だよ。分かったら黙れ」 乱暴に吐き捨てる。 「そうか。ぼくらのほうがうえだな。」
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