過去

7/7
前へ
/21ページ
次へ
「きになるのか、ぼくらのとしが、そこまで。」 病院から出てきたところを慌てて呼び止めた。 オレ自身の診断は休みで、様子を見ろと言われて3日目のことである。 明らかに双子へ興味を持ってしまったことの証明だ。 「ぼくらは、うまれてから15ねん、いきている。」 頭はオレの腹の位置にあるというのに、一つ年上などと言う。 だが疑ってもしようがない。 話を聞く内に二人の家に着いてしまった。 あろうことか近所だった。 表札には『山田』の文字が掲げられている。 「ははかたのみょうじを、つかっている。しんせきに、ぼくらのそんざいは、しられていない、からな。」 「おやとも、あってない。」 小さな声で付け足したのは妹。 ここらの近所付き合いは上辺だけなので、二人だけで生きてきたといっても過言ではない。 親がいないのはオレも当て嵌まる。 _辛いときは、 「…お前ら、辛くないのか」 「つらい、と。そうみえるか、あなたには。」 兄はなんとも無しに答えた。 妹は想いが決壊したように泣き出した。 _周りに相談しなさい 「お前も…辛いなら泣けよ」 妹の変化に目を見張っていた兄は、蒼野を勢い良く見上げた。 「あなたこそ、むりをしているようにみえる。」 「…うるせぇな、大人はそう簡単に泣けねぇよ…!」 目頭が熱いのは気のせいではない。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加