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「きになるのか、ぼくらのとしが、そこまで。」
病院から出てきたところを慌てて呼び止めた。
オレ自身の診断は休みで、様子を見ろと言われて3日目のことである。
明らかに双子へ興味を持ってしまったことの証明だ。
「ぼくらは、うまれてから15ねん、いきている。」
頭はオレの腹の位置にあるというのに、一つ年上などと言う。
だが疑ってもしようがない。
話を聞く内に二人の家に着いてしまった。
あろうことか近所だった。
表札には『山田』の文字が掲げられている。
「ははかたのみょうじを、つかっている。しんせきに、ぼくらのそんざいは、しられていない、からな。」
「おやとも、あってない。」
小さな声で付け足したのは妹。
ここらの近所付き合いは上辺だけなので、二人だけで生きてきたといっても過言ではない。
親がいないのはオレも当て嵌まる。
_辛いときは、
「…お前ら、辛くないのか」
「つらい、と。そうみえるか、あなたには。」
兄はなんとも無しに答えた。
妹は想いが決壊したように泣き出した。
_周りに相談しなさい
「お前も…辛いなら泣けよ」
妹の変化に目を見張っていた兄は、蒼野を勢い良く見上げた。
「あなたこそ、むりをしているようにみえる。」
「…うるせぇな、大人はそう簡単に泣けねぇよ…!」
目頭が熱いのは気のせいではない。
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