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空はいつのまにか、紫に染まっていた。 「おじゃましました。」 「おじゃましました。」 双子は手を繋いで、まだ秋が残る外へ。 「にいさん。ひとつきいてもいいかな。」 椎はくるりと振り返った。 「こんど、ぶんかさいがあるんでしょう。」 蒼野はふいを突かれ、思わず頷いてしまった。物も少し奇妙な顔で立ち止まっている。 彼女の頬は紅葉と同じ色に染まった。 「あたいは、しってるの。ぶんかさいのひ、たのしみにしてて。」 それだけ言い残すと、兄の手を取り小走りに駆けていく。 物が引っ張られる形になったが、椎は気にせず引きずっていく。 去っていくのを見送り、蒼野は首を捻った。 話してはいない…が、配布物でも読まれたのだろう。 勝手にそう解釈して家に戻った。
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