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 日に日に影を濃くしてゆく帰り道。  改札を抜けると、暖かな空気が蒼野を取り巻く。雑草が連なり顔を出す、人の少ない土の道だ。  聞き慣れたチャルメラが遠くに聞こえる。  毎日見る光景一つ一つを噛み締め、背中を丸めて歩いた。 「にいさん。」 「にいさん。」  夕日を浴びた兄妹が、同時に幼い声を出す。 「おう、物と椎。」  蒼野は夕日に滲んだ笑顔で答えた。
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