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「おかえりなさい。」
少年の方、物は言うが早いか、鞄を肩から引き下ろし始めた。
「おお、おいおい。重いぞ」
蒼野は笑いながら物を引き剥がす。椎は眉を潜めて無言で兄を見つめた。
ばつが悪そうな兄はそっと妹の後ろに回る。
「あたいはにいさんのいえをあける。かぎ、かして。」
急に無邪気な笑顔を浮かべて手を差し出す椎。今度は物が不満そうな顔に変わる。
「ほらよ」
蒼野が投げた鍵は、綺麗に椎の手の内に収まった。椎は素早く先を駆けていく。
が、ふいに椎は振り返り、兄へ得意気な顔を見せつけた。
「椎。」
椎は兄の呼び掛けには答えず、すぐに曲がり角を曲がった。
物は悔しげに拳を固める。
「…いや、お前ら?オレは平等に見てるからな?」
蒼野に好かれたい合戦を目の前で繰り広げられている当人は、諭すように物の頭を軽く小突く。
しかし物は首を振り、真剣なのだと目で訴えかけてきた。
「そうではないのだ。これはぼくら、ふたごのゆいいつの、たいせつな、わけめなのだ。」
「…んな重大なジャッジにオレが関わってるワケ?」
「まきこんでしまったことは、あやまる。」
「そうじゃねーんだ、物よ…」
自分の腰ほどしか身長のない物と並んで歩く。少々奇妙な光景だろう。
「…そうだ、面白い話してやろうか。」
「椎がいないのにするのか、にいさんもひどいひとだ。」
結局は椎の防護に回る家族想いな兄を、つい撫でてしまってから、蒼野は話を始めた。
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