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 ひらりと揺れる、白いカーディガン。それが覆う華奢な肩に、僕は自分の武骨な掌を置いた。 「あの……」  ぶっきらぼうな僕の声に、小さな肩がびくりと跳ねた。ぎこちなく振り返ったのは、強張った笑みだった。短い黒髪がさらりと揺れる。  僕がその黒髪に見惚れていると、彼女は小さく返事をした。本当に小さく、雑踏の中で思わず聞き逃してしまうところだった。 「これ……」  僕がぶっきらぼうな言葉とともに差し出したのは、黄色い花柄のハンカチだった。  そのハンカチを見た彼女は怪訝に眉を顰めたが、僕を見ると、ぱっと表情を咲かせた。小さな手でハンカチを受け取るが、目は僕から離さない。 「ありがとうございます」  他人行儀な言葉の中に、僅かに親しみを込めて彼女は頭を下げた。 「これ、結構気に入ってて」  彼女は恥ずかしそうにはにかんで、肩を竦める。よかった。小声でそう呟くと、彼女はハンカチをそっと鞄にしまった。 「ホントに、気に入ってるんです」  彼女はもう一度、呟いた。 「ここ、渡ってしまいましょうか」 「そうですね」  僕らは、大量の歩行者が行き交うスクランブル交差点のど真ん中に立ち尽くしていた。     
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