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足を踏み出すたびに足の裏に激痛が走る。小さな枝が足に刺さり、出血していた。持っていたハンカチをちぎり、足に巻き付ける。するとパンプスがきつくなり、無理に足を突っ込むと、小指がじんじんしてくる。なんでタクシーから降りてしまったのだろう。意味がわからない。なにも悪いことをしてないなら、堂々としていればいいのだ。
もう一度タクシーに電話をしてみようと携帯を持った途端、電話が鳴った。同僚の恵美からだ。
「煩多って人が、あなたを狙ってるってTwitterで騒がれてるけど。本当なの? 今、どこ? 迎えにいこうか」
「何もしてないの。でも、こんなことになってる」
「じゃあ、どうして」
「……率直な意見をいっただけなの。恵美だって彼がクリエーターに向かないって愚痴ってたじゃない。あいつのデザイン、ダサいって。だからつい……」
「つい?」
やめた方がいいんじゃない。あなたのデザイン、時代遅れよ。みんなそう言ってる。
「なんでもない。とにかく私は関係ないの」
「やばくない? きいた話なんだけど、煩多が公開した人間、みんな一か月以内に死んでるんだって」
「みんな? あの五歳児の件だけじゃないの」
「ネット繋がるなら、検索してみなよ。……それより佐和子、行くあてあるの。家行ったら、カメラ撮ってる人がたくさんいたよ。多分、ツイッターみてきた野次馬。マスコミとかではないと思うけど」
「……ありがとう切るね」
この山を越えれば家がある。いつもは電動自転車で一気に駆け上がっていたけれど、徒歩ではこんなにしんどかったなんて。駅前のマンガ喫茶で『ガラスの仮面』にはまったのがいけなかった。もう夜十二時をまわっている。
携帯を確認すると新着ツイートがあった。恐る恐る開いてみる。
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