かつてを、取り戻す

25/25
144人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
 まったく、負けると分っているのに私のところに何故来るのだと嘆息するディア。  それはディアが綺麗で優しいからだとエリオットは言おうと思ったが、ディアはそのことをあまり自覚していないのだ。  だから言わず、そのディアの対応を見ながらエリオットは、俺の最愛の魔王様は今日も平常運転だな……と思って、今は神なんだとエリオットは思いなおす。  ディアは人の国とも交流を始め、人の国の王様とも会った。  王様は相変わらずで、そして、その時分ったのは訓練して力を蓄えさせるためにエリオットを送ったのではなく、勇者だから魔王を倒すものじゃね、とか、ある種の丸投げ的なものだったらしい。  思い出すだけで憂鬱な話にエリオットが瞳をどんよりとさせていると、 「どうしたんだエリオット」 「いや、世の中想像を絶する話もあるなって」 「ああ……でも、私はエリオットに会えただけで幸せだ」  そう微笑むディアに、エリオットはむらっと来た。  そしてそのままキスをする。 「んんっ」  何度キスしても足りなくて、幸せで。  そして唇を離して、そこでディアが言う。 「これからも一緒にいよう、エリオット」 「当たり前だ。俺はディア無しじゃいられない」 「私もだ。エリオット無しではいられない」  そうお互い言い合い笑う。  そんな二人を祝福するように暖かな風が窓から入り込み、暑い夏を予感させるような、甘い予兆を感じさせたのだった。 [ハッピーエンド]
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!