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はは~ん、そうか……そういう事か……
いつかの出来事をデジャブのように思い出し、俺は思わず笑ってしまった。
あの時、俺をからかったのは今とは逆で陸の方だった。
そうそう、あの時は俺の方が今のコイツみたいにカリカリしてたっけ……。
まさか、陸にもこんな日がくるなんてな……、
クスクスと笑う俺の様子で、陸は俺が何を察したのかを感じ取ったのか、
「それ以上は言わないで、お願いだから絶対に言わないで!ゆうとさんに指摘されると余計に凹むから!」
と敗北宣言までする始末。
おいおい、天下の陸様どこに消えたんだ~、お前、マジで大丈夫かよ
突っ込みどころ満載ではあるが、まぁ、そこはデリケートな問題。
以前にからかわれた俺としては、言い返してやりたい気持ちがてんこもりではあるが、年上の威厳も保ち――、そうだな。
うん、たった一言で許してやろう。
「陸」
「――な、何ですか?」
その視線は警戒心丸出しの猫のよう。
本当にマジで可愛いなーー、言ったら殺されそうだけど……。
俺は陸の目を見て、たっぷりの間を開けたあと、
「――――あまり焦るな」
と慰めてやった。
顔面蒼白の陸が「キーッ」と叫びそうになり、俺は手で制止の真似事をする。
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