第4章

3/89
前へ
/574ページ
次へ
「おはよう、悠ちゃん」 それは穏やかな朝の始まり。 「おはよう、理子」 悠ちゃんの優しい笑顔。 そして、日課となりつつある私の額に小さなキスをくれるんだ。 毎日繰り返されるこの些細な出来事が、私はとても嬉しくて――、その首にギュッとしがみついたら、 「朝から元気だな、俺の理子ちゃんは」と言って笑った。 そして、よいしょと左ひじをつき身体を起こした悠ちゃんは、頭一つ分の少しだけ高い位置から私を見下ろす。 本当は朝の忙しい時間。 こんなことしてる場合じゃないんだけど――、 そう、ないんだけど――、私達はそれもわかっていて、こうして数秒見つめあっている。 俗に言うバカップルなのだ。 いや、新婚カップル? どっちでもいいや。 だって、悠ちゃんから優しいキスをくれたから。 唇に唇を重ねた優しいキス。 それだけでじんわりと心が温かくなる。 そして、ゆっくりと離された唇は、まだすぐそこにあり、目を合わせて私達は笑いあった。 「あ~」 悠ちゃんの突然の雄たけび、 そして、頭をもたげていた悠ちゃんが再び枕に脱力し、 「会社行きたくねぇ~」 と両手で顔を覆って叫んだ。 こんな駄々をこねる悠ちゃんはレアだけど、私は最近結構対面することが多い。
/574ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1697人が本棚に入れています
本棚に追加