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あ~、とか、う~、とかベッドの中で悠ちゃんが唸っている。
かれこれ、2、3分。
そんな悠ちゃんが愛しくてたまらない。
「あ~、マジで会社行きたくねぇ~」
「なんか、お腹痛い気がしてきた。頭も痛いかも」
「なんか、だるいかも、もしかして俺、熱もあるかも?」
と、小学生みたいな言い訳をする悠ちゃん。
おかしくて、私は笑ってしまった。
そんなこんなで時計は進む。
さすがにこれ以上、ベッドの中でゴロゴロはしていられない。
悠ちゃん、ほんとに遅刻しちゃうよ。そろそろ準備しないと!
だから、
「悠ちゃん。理子、ちゃ~んと家で待ってるから、お仕事頑張って来てね。そして、理子に会いに早く帰って来てね」
そう言って頬に軽くキスをしたら、
悠ちゃんが手をどけて私をジッと見る。
そしてなぜか眉根を寄せた。
あれ?不機嫌?
なんで?
怒られるような事はしてないはずなのに――、
渋い表情の悠ちゃんが長い沈黙の後、ようやく口を開いた。
「理子――、それは飴と鞭のどっち?」
「え?」
問われてる意味がわからなくて私はポカン。
「飴のようにも聞こえるし、鞭のようにも感じられる」
「え」
悠ちゃんどうしたの?
唖然としていたら、
「あ~、もうっ!どっちにしたって、行きたくねぇものは、行きたくねぇ」
叫ぶ悠ちゃんにギュッと抱きしめられる。
その5分後、
下から、ゆき枝さんに「遅刻するよ!」と怒鳴られたのは言うまでもない。
あ~、何て幸せな朝。
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