第1章

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「ついさっきまで私の手の中にあったはずのものが、突然なくなってしまうの……それってすごく怖いことでしょう?」 そうつぶやいた華ちゃんの表情は硬くこわばっていて、手もかすかにふるえているように見える。 「華ちゃん…? 大丈夫?」 そんなことしか言えない私。 もっとちゃんとなんかちゃんとしたこと、言ってあげたいのに! 「ごめんなさい……急にこんなこと言って、あなたに言っても仕方のない事だったのに……」 「それって陸さんの事なんですよね? 陸さんがいなくなってしまうという意味ですか? どう考えても、そんなことないように思うんですけど……」 「……普通はそうだよね」 「え?」 「あなたの旦那さんがもしも理子ちゃんの事、突然忘れてしまったら……あなたはどうする?」 「え、私を忘れる?」 「……そうよ、ありえないことだと思うけど、それは絶対ではないわ」 「……私を…忘れる?」 「忘れられても、好きでいる自信ある?」 とんでもない話であることには間違いないけれど、華ちゃんはものすごく真剣だった。 だから私もごまかせる雰囲気ではなく、唇をかみしめ真剣に考える……。
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