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「ついさっきまで私の手の中にあったはずのものが、突然なくなってしまうの……それってすごく怖いことでしょう?」
そうつぶやいた華ちゃんの表情は硬くこわばっていて、手もかすかにふるえているように見える。
「華ちゃん…? 大丈夫?」
そんなことしか言えない私。
もっとちゃんとなんかちゃんとしたこと、言ってあげたいのに!
「ごめんなさい……急にこんなこと言って、あなたに言っても仕方のない事だったのに……」
「それって陸さんの事なんですよね? 陸さんがいなくなってしまうという意味ですか? どう考えても、そんなことないように思うんですけど……」
「……普通はそうだよね」
「え?」
「あなたの旦那さんがもしも理子ちゃんの事、突然忘れてしまったら……あなたはどうする?」
「え、私を忘れる?」
「……そうよ、ありえないことだと思うけど、それは絶対ではないわ」
「……私を…忘れる?」
「忘れられても、好きでいる自信ある?」
とんでもない話であることには間違いないけれど、華ちゃんはものすごく真剣だった。
だから私もごまかせる雰囲気ではなく、唇をかみしめ真剣に考える……。
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