第1章

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「黙って待ってれば、どんどんヒートアップしやがって、ったく」 陸がいら立ちを隠せず理子に説教をくれる。 おいおい、俺のかわいい奥さんあんまりいじめないでくれよ 言葉には出さず心の中で呟けば… 「また会いにくればいいだろ、ここに。そんな泣いてる暇なんかないし、泣いてばっかでゆうとさんを困らせてんじゃねぇよ。妻だろ?」 優しいのか、厳しいのかわからない発言をしている……いや、やっぱ、優しいんだな。不器用な表現だけど 「会いに……行きたいけど、本当に連れてきてくれる?」 「俺は嘘は言ったことないだろ」 「……ない」 「ならいつまでも泣いてないで、ゆうとさんのこと安心させてやれ」 「うん、わがった」 「よしっ、なら俺は、先に行ってるからな。ゆうとさん、体に気を付けて」 「ああ、いろいろとありがとな、陸。またいろいろ迷惑かけることもあるかもしれないけれど――」「迷惑なんかじゃないから、いつでも連絡してくれていいよ」 「ほんと、頭が上がらないな……。ありがとう」 「じゃ、先に行ってます」 陸は搭乗口へと向かい先に飛行機に乗り込んだ。 理子に残された時間も残りわずかだ。俺は視線を理子へと戻し、理子の額に唇を落とした。 「悠ちゃん?」 俺の突然の行動に理子はびっくりして驚いている。 「涙止まったね。良かった。もうそろそろ時間だよ、理子」 「……うん、わかってる」 「理子、よく聞いて、どんなに遠くにいても、いつも君を想ってるよ。何かあったら距離を理由にしないで、俺に相談して。我慢しないで、なんでも俺にいってほしいんだ。約束できる?」 理子の目をまっすぐに見つめ、俺の気持ちを伝える。 「うん、する。ちゃんと話す」 「いい子だ」理子の頭をやさしくなでる。 「悠ちゃん、好き……大好き」 「俺も好きだよ、理子」 一瞬触れるだけのキスを交わし、俺は理子の背中を押した。 「もう行って……乗り遅れたら、心配だ」 「うん、行く。悠ちゃん、私、また会いにくるからね」 ぶんぶんと大きく手を振り続け、理子は見えなくなった。 まるで大事なものをなくしたような寂しい気持ちがこみ上げるが、しっかりしなくてはと自分にカツを入れる。 仕事で結果を出し、俺は一日でも早く家に帰る。 俺は改めて、そう強く決意した。
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