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「黙って待ってれば、どんどんヒートアップしやがって、ったく」
陸がいら立ちを隠せず理子に説教をくれる。
おいおい、俺のかわいい奥さんあんまりいじめないでくれよ
言葉には出さず心の中で呟けば…
「また会いにくればいいだろ、ここに。そんな泣いてる暇なんかないし、泣いてばっかでゆうとさんを困らせてんじゃねぇよ。妻だろ?」
優しいのか、厳しいのかわからない発言をしている……いや、やっぱ、優しいんだな。不器用な表現だけど
「会いに……行きたいけど、本当に連れてきてくれる?」
「俺は嘘は言ったことないだろ」
「……ない」
「ならいつまでも泣いてないで、ゆうとさんのこと安心させてやれ」
「うん、わがった」
「よしっ、なら俺は、先に行ってるからな。ゆうとさん、体に気を付けて」
「ああ、いろいろとありがとな、陸。またいろいろ迷惑かけることもあるかもしれないけれど――」「迷惑なんかじゃないから、いつでも連絡してくれていいよ」
「ほんと、頭が上がらないな……。ありがとう」
「じゃ、先に行ってます」
陸は搭乗口へと向かい先に飛行機に乗り込んだ。
理子に残された時間も残りわずかだ。俺は視線を理子へと戻し、理子の額に唇を落とした。
「悠ちゃん?」
俺の突然の行動に理子はびっくりして驚いている。
「涙止まったね。良かった。もうそろそろ時間だよ、理子」
「……うん、わかってる」
「理子、よく聞いて、どんなに遠くにいても、いつも君を想ってるよ。何かあったら距離を理由にしないで、俺に相談して。我慢しないで、なんでも俺にいってほしいんだ。約束できる?」
理子の目をまっすぐに見つめ、俺の気持ちを伝える。
「うん、する。ちゃんと話す」
「いい子だ」理子の頭をやさしくなでる。
「悠ちゃん、好き……大好き」
「俺も好きだよ、理子」
一瞬触れるだけのキスを交わし、俺は理子の背中を押した。
「もう行って……乗り遅れたら、心配だ」
「うん、行く。悠ちゃん、私、また会いにくるからね」
ぶんぶんと大きく手を振り続け、理子は見えなくなった。
まるで大事なものをなくしたような寂しい気持ちがこみ上げるが、しっかりしなくてはと自分にカツを入れる。
仕事で結果を出し、俺は一日でも早く家に帰る。
俺は改めて、そう強く決意した。
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