第1章

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タケさんは、60代前半? 配管屋さんらしくて、車を自宅の駐車場に停めて、作業着のまま来夢来人に来てるっぽい。 どうやら、他にお客さんがいない時は、この4人席のソファー側が定位置らしく、混んで来たら 渋々カウンターに移ると、ママが言ってた。 私が注文を聞く必要もなく、ママが瓶ビールとグラスを出した。 私は急いで乾き物をテーブルに置く。 そうこうしてる内に、山本のじいさんが「なほちゃん、これ、これ入れて」と、自分で作ったカラオケメモの上から3番目を指差す。 「はい。森進一の冬のリビエラですね?」と言うと 「えっ?違うよ。その下だよ~~。襟裳岬だよ~~」と。 「えっ?あっ、ごめんなさい。襟裳岬、はい、入れました~~」 じいさん、あんたの指が太過ぎて 3番目なのか4番目なのか 分からんよ… それに、冬のリビエラだろうが襟裳岬だろうが、どっちでも良いだろっ!と思ったが そんな事は言えない。 今日が水曜日だからなのか? 8時までお客さんはこの2人だけで、タケさんには 「夏穂ちゃんは、何でここでバイトする事にしたんだ? えっ?32かよ!ワケーなあー。 若っけ~と思っててもよ、すぐババアだからよ、早くイイ男見つけて嫁に行かね~と行けなくなるぞ」と同じ事を3回言われて 最初こそ 「はい~~。ですよね~~」と答えていたが 3回目には、ガン無視で タケさんの歌いそうな歌を適当に入れて「はい、タケさん、吉幾三入りましたよ~~」と、マイクを無理矢理持たせる。 タケさんは「あれ?俺、こんなのいれたっけ?」とか言いながらも、立ち上がって歌ってた。
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