The Story of Shinsaku Takasugi

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小さな遊郭。 女たちの嬌声が耳につく。 「……は」 息を荒げて、組み敷いている女を見下げる。 脳裏に浮かぶのは――――いつも。 俺の事を見透かすような、透き通った蒼い、瞳。 沁み一つない、真っ白な耀く肌。 己の手に絡まる、金色の梳けるような髪。 そして、――真っ赤な、唇。 「―――しんさ、」 「黙れ」 「んぅ」 煩い。俺の思考を邪魔するな。その口で、俺の名を――簡単に、呼ぶな。 声を零す濡れそぼった唇を、ぶつける様にして塞ぐ。 俺は、ひたすらに虚しい気持ちをのせて、動く。 ああ、俺は。 あの女に、雁字搦めにされている。 「や、も、無理――――」 「っ」 急激な鼓動の高まりとともに、頭が、白くなる。 あの女のことなんて、全て、消えてしまえばいいと。 全てを真っ新に忘れてしまいたいと―――そう思った。
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