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眠りに落ちて忘れたい
書斎に1人佇む。
ガラス製のデスクトップライト、タイプライター、万年筆とインク壷。
シンプルなワイシャツに、黒い腕抜きをして、
今日は大量の計算をした。たいへん捗った。
息抜きにドリップしたコーヒーを。少し薄めのアメリカンで。
チェコの土産だと差し出された、小さな手紙のようなパッケージの砂糖の封を開ける。
スプーンの渦の中にサラサラと溶けていく。
温かな香りに包まれる。
窓の外は冷たい雨だ。
彼女はいつもブラックで飲んでいたな。
《私だって、たまには砂糖もミルクも入れるわ。》
そう言ってくすくすと笑うんだ。
頬を涙がつたっていく。
どうして分かってもらえなかったんだろう。
どうして分かってあげられなかったのだろう。
もう一度、なんて
酷く未練がましくて情けなくなる。
いいや、もう会わせる顔なんか。
これ以上 傷付く覚悟もなくてな。
「馬鹿みたいだ、俺」
ソファに身体を横たえてギュと目を瞑る。
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