壊れたビニール傘

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壊れたビニール傘

ここのところ雨が続いている。 数か月前からコンビニで働いている俺。 雨の日は、傘立ての用意や濡れた床を掃除なんかの仕事が増えて面倒くさい。 「雨の日はホント嫌いだよ」 レジの奥で新聞を読みながら、けだるそうに呟くのは、この店のオーナーで店長の男だ。 雨が降ると客は次々とやって来るのに、店長はやる気がなくて使い物にならない。 レジには長蛇の列ができ、客の顔もどこか不機嫌そうだ。 レジから見える店長の姿を、客は睨むように見ているが、店長は気にしていない。 おかげで俺はレジ捌きがうまくなった。 並んだ客の会計が終わると、安堵と疲労感で大きなため息が出る。 客がいなくなったかと思えば、雨がすっかり止んでいた。 傘立てにあふれるほど置かれた傘も消えた。 だが一本だけ、ビニール傘が残っている。 「またか……」 雨の日になると、必ず1本のビニール傘が置かれている。 忘れ物というわけでもなさそうだ。 何故なら、そのビニール傘は壊れている。 傘の骨は折れ曲がり、ビニールには泥がこびり付き、一部は破れている。 こんな傘、差したとしても雨を防げないし、下手すれば泥で服が汚れるだろう。 イタズラだ、きっと。     
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