11 運命の溺愛(※)(最終話)

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     同棲開始して一月が経った。  毎日ではないが、清史郎はなるべく早い帰宅を心がけているようだ。  だがそれは裏を返せば、春海の配慮だ。  秘書の彼が、過密スケジュールをうまく調整してくれているのだと、智秋は兄に感謝した。  夕飯後が、二人の語らいの時。  肩の傷に触るからと、定番の背後からの抱っこは、しばらくの間封印中だ。  ソファに隣り合わせに座り、清史郎がそっと智秋の左肩を抱き寄せるのが、最近のいちゃいちゃスタイルだ。  「欲しいものや足りないものはないか? 何でも叶えるから言ってくれ」  智秋はもともと物欲がない。  細々したもの、例えばお菓子などは、ハウスキーピングさんが買い物に行くついでに、こっそりお願いしている。  それにきっと清史郎が言っているのは、そんなささやかなものではないのだ。  しかし無い袖は振れない。
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