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二人の母親、浅香鞠衣(まりい)はオメガだ。
鞠衣は十八歳の時、春海の父親であるアルファと出会い、恋愛の末、結ばれた。相手は大企業の御曹司。すぐに春海を授かったが、二人は結婚には至らなかったのは、生まれたのがオメガ種の赤ん坊だったからで、それが春海だ。
智秋と春海は異父兄弟だ。
智秋の父親もアルファだが、既婚者のため結婚できなかった。そして鞠衣は相手に噛みつかれて望まない番にされたことで、余計に智秋を疎んでいる。
オメガ種保護のため、堕胎は法律で禁止されていて、その代わりオメガ種を出産すると、その子どもが成人するまで国から高額な手当が支給されるのが救済策となっていた。
「春海がいつかアルファのお金持ちに見初められますように」
鞠衣にまったく悪意はなく、子どもは自分が楽して幸せに生きるためのツールだ。ゆえに出来のいい春海に期待をし、反対に不出来な智秋には関心すら抱かない。
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