01 春海と智秋

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「兄ちゃんといっしょに、あんなに勉強したのに、百点じゃなかったの」 「智秋……」 「兄ちゃん。ぼく、母さんに、どんどん、きらわれちゃう」 「智秋、泣かないで」  春海が智秋の頭を優しく撫でる。  智秋の髪は赤茶のくせ毛。どんなに櫛をとおしても、ぽわんと膨らんでしまう。だが春海は「智秋の髪はふわふわして気持ちがいい」と触ってくれるのが、智秋はうれしい。  でも本当は、春海のゆるやかにウェーブした薄茶の髪が羨ましい。  顔立ちも、涼やかな美形の春海に対して、智秋は特徴のない地味な造形だ。  唯一似ているのは色白なところだが、シミひとつない春海と違って、智秋はそばかすだらけ。  おまけに春海は細身ですらりと背が高く、王子さまみたいだと女子からの人気が高い。
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