10 愛おしい

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「ん……」  智秋は目を覚ました。  どれだけの時間、寝たのだろうか。  ブラインド越しに見える窓の外は、既に暗い。  中庭の外灯の光が、室内をぼんやりと照らす。  智秋は自分の傍らに腰掛けている人影に気づいた。 「せいしろう、さん……」  寝起きの声は掠れて、弱々しい。   「智秋。無理して喋らなくていい」  三日ぶりに聞く恋人の甘い美声に、智秋は感極まり、目元が潤む。   智秋は首をかすかに横に振った。 「やっと……来てくれた……」 「智秋……」  春海は、絶対ここに清史郎を連れてくるという約束を、守ってくれたのだ。 (ああ、きっと、兄ちゃんにめちゃくちゃ叱られたんだろうなあ)  そう思うと、可哀想で、思わず笑みが溢れる。 「ずっと、待ってたよ……なのに……なんで、なんで……」  嬉しさと切なさと愛しさで、胸がいっぱいで、うまく言葉が出てこない。
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