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「ん……」
智秋は目を覚ました。
どれだけの時間、寝たのだろうか。
ブラインド越しに見える窓の外は、既に暗い。
中庭の外灯の光が、室内をぼんやりと照らす。
智秋は自分の傍らに腰掛けている人影に気づいた。
「せいしろう、さん……」
寝起きの声は掠れて、弱々しい。
「智秋。無理して喋らなくていい」
三日ぶりに聞く恋人の甘い美声に、智秋は感極まり、目元が潤む。
智秋は首をかすかに横に振った。
「やっと……来てくれた……」
「智秋……」
春海は、絶対ここに清史郎を連れてくるという約束を、守ってくれたのだ。
(ああ、きっと、兄ちゃんにめちゃくちゃ叱られたんだろうなあ)
そう思うと、可哀想で、思わず笑みが溢れる。
「ずっと、待ってたよ……なのに……なんで、なんで……」
嬉しさと切なさと愛しさで、胸がいっぱいで、うまく言葉が出てこない。
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