10 愛おしい

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 顔をあげた清史郎の瞳は、潤んでいた。  打ちひしがれた清史郎が、可愛くて、愛おしくて、智秋の胸はきゅうっと締め付けられる。   「俺はもう逃げないって決めた。今回、北園は逮捕されたけど、刑を終えて、再び俺の前に現れるかもしれない。だけど俺は毅然とあいつに立ち向かうんだ。この傷は」  智秋は左手で包帯にそっと触れた。 「これは、俺が清史郎さんを守った名誉の負傷だ。この傷があるから、俺はきっと、もっと、強くなれるよ。清史郎さんのおかげだ。だから……だから、俺から離れようなんて……言わないでよ……お願い……」  ぽろぽろとこぼれる智秋の涙を、清史郎が震える指先で拭う。 「智秋、どうか、泣かないで」 「清史郎さんのせいだ。清史郎さんを好きだと気づかせておいて、別れるなんて、絶対に許さないんだからな……」 「俺は、君を好きでいても、いいのか?」 「うん」 「側に寄り添い、恋人と名乗っても?」 「うん」  清史郎は智秋の目元に静かに唇を落とす。 「ありがとう。智秋、愛している。こんな不甲斐ない俺だが、一生共にいて欲しい」  智秋は驚きのあまり、声が出せなかった。
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