2244人が本棚に入れています
本棚に追加
顔をあげた清史郎の瞳は、潤んでいた。
打ちひしがれた清史郎が、可愛くて、愛おしくて、智秋の胸はきゅうっと締め付けられる。
「俺はもう逃げないって決めた。今回、北園は逮捕されたけど、刑を終えて、再び俺の前に現れるかもしれない。だけど俺は毅然とあいつに立ち向かうんだ。この傷は」
智秋は左手で包帯にそっと触れた。
「これは、俺が清史郎さんを守った名誉の負傷だ。この傷があるから、俺はきっと、もっと、強くなれるよ。清史郎さんのおかげだ。だから……だから、俺から離れようなんて……言わないでよ……お願い……」
ぽろぽろとこぼれる智秋の涙を、清史郎が震える指先で拭う。
「智秋、どうか、泣かないで」
「清史郎さんのせいだ。清史郎さんを好きだと気づかせておいて、別れるなんて、絶対に許さないんだからな……」
「俺は、君を好きでいても、いいのか?」
「うん」
「側に寄り添い、恋人と名乗っても?」
「うん」
清史郎は智秋の目元に静かに唇を落とす。
「ありがとう。智秋、愛している。こんな不甲斐ない俺だが、一生共にいて欲しい」
智秋は驚きのあまり、声が出せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!