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「ああ、また先走ってしまったようだ。すまない。君を好きすぎて、すぐに気持ちが溢れてしまう。まだ早すぎるだろうと、怒らないでくれ」
「怒ったりしないよ。もう、嬉しくて、涙、止まらないじゃんか」
「それは俺には朗報だ。いつまでも智秋の目元にキスができる」
「何言ってんだよ……」
智秋の予想通り、清史郎は、怪我の責任を取って、智秋と別れようとしていた。
智秋が目の前で刺されたことに、深く、深く、清史郎の心は、傷ついている。
彼にしてみれば、自分が刺されるほうがましだったろう。
だがそれは智秋が嫌だった。
智秋はあの時の自分のとっさの行動を、悔いていない。
愛する人を傷つけられたくない気持ちは、智秋も同じだ。
だが、身体を張って愛する人を守ったことで、却って彼の心を傷つけてしまった。
清史郎の心の傷を癒やすために、もっと強くなりたい。
頼るだけじゃなくて、頼って欲しいのだ。
目の前の美丈夫は、繊細で、傷つきやすく、とても愛おしい存在だ。
智秋は、清史郎への愛情の質が、包み込むようなものに変化していくのを、感じていた。
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