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「南条清史郎だ。君の兄さんと親しくさせてもらっている」
清史郎が智秋にすっと手を差し出した。
おずおずと智秋はを握り返し、俯いていた顔をゆっくり上げると、清史郎と目が合う。
美しい男性が、強い眼差しで智秋を容赦なく射抜くせいで、智秋は柄にもなくドキドキしてしまう。そして重なる手のひらから、温もり以外の何かが流れ込んできて、智秋の内部にじわじわと侵食していくのが、なんだかこそばゆい。
「清史郎、座ったら?」
「そうだな」
得体のしれない感情に戸惑っていると、春海が清史郎に着席を促してくれて、智秋はほっとした。
あっけなく離れていく手の温もりが、名残惜しい。
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