02 兄の恋人

9/21
前へ
/287ページ
次へ
 智秋はぶんぶんと両手を大きく振って、全身で拒絶すると、春海がやんわりと諭す。 「智秋。彼の願いを叶えてあげて? 清史郎ね、僕があんまり智秋のことを話すものだっから、会う前から智秋を弟みたいに思っているんだよ」 「弟……」 「春海が溺愛する弟がどんな子か、ずっと気になっていたんだ」  彼の眼差しに、智秋の胸が大きく高鳴る。  変な気持ちがじわじわと胸に広がって、居心地が悪い。 「……智秋くん、どうした?」  突然何かが頬に触れた。  微量の電気が流れたように身体が痺れる。  智秋は「うわっ!」と小さく悲鳴を上げて、身体を後ろにのけぞらせた。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2244人が本棚に入れています
本棚に追加