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春海がいてくれてよかったと思う。
もし優しい兄がいなければ、すでに母親に見捨てられている智秋は、辛くて生きていけなかっただろう。
夕焼けに伸びる影を踏みながら、二人は帰宅した。
智秋はおそるおそる算数のプリントを母親に渡すと、母親は点数を一瞥した後「あんたってほんと頭悪いのねえ」と心底呆れた調子で呟くと、プリントをぽいと床に投げ捨てた。
「母さん!」
かさりと足元にテスト用紙が智秋の足元に落ちて、春海が隣で泣きそうな声で叫んでいるのが、聞こえた。
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