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「どきなさい」
「いやだ! 俺に怒ってるなら、俺が帰る! だから清史郎さんは帰らないで!
「だから俺には用事が」
「ちがう! 俺にムカついてるんだ! だから兄ちゃんを置いてくんだ!」
清史郎は深くため息を吐いて、呟いた。
「こんな子どもに……」
「え?」
最後のほうが聞き取れなくて聞き返すが、清史郎は無視した。
「春海、この埋め合わせは必ずする」
「明後日、また学校でね」
「智秋くん。これ以上春海を困らせないようにしたまえ」
あやすように、ぽんと頭に手を乗せて、清史郎はするりと智秋の脇を通り抜ける。そして来た時と同様に、颯爽と店を出ていった。
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