03 発情期

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 智秋の発情期は中学時代にとうとう訪ずれないまま、地元の私立高校に進学した。  特進クラスがアルファのみで構成されている以外は、大多数のベータと少数のオメガが通う、普通の学校だ。   中学と同様、オメガの学生数は一学年で十人ほど。クラスメートはベータばかりで、アルファの生徒とは別クラスのせいで、廊下ですれちがう程度だ。  高校では、男のオメガは智秋だけで、他の学生はみな女子で、全員中学時代に発情期を迎えていた。  抑制剤の効能は確実で、発情期中でも症状は抑えられる。だがその分副作用が強く、薬との相性が悪いと体調を崩しやすい。保健室登校をしているオメガの学生に「大変だなあ」とまだ他人事のように智秋は捉えていた。  高校では、亜泉克也(あずみかつや)という男子と親しくなる。彼はベータだ。  一年生で同じクラスとなり、浅香と亜泉で席が前後していて、自然と話すようになった。  二人は気が合って、親友となる。  身長が百五十五センチの智秋と、百八十五センチの亜泉。おまけに亜泉は野球部で体格がいい。  立派な体躯の亜泉は、智秋の憧れだった。
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