押し入れにいる!

2/3
前へ
/3ページ
次へ
「ねえ、何かいるよ。何かいるの」  六歳になったばかりの梨香が押し入れを指さして、何かいるとしきりにおびえている。 「何にもいないって」 「ううん、いるの。ママをさがしてるよ」 「あたしを? なんで?」 「ママをさがしてるの」 「何言ってんのよ。頭おかしいんじゃない。黙ってよ」 「ママをさがしてる。ほら、あそこに」  梨香は押し入れを指さして震え出す。 「黙りなさいよ!」  逆上した私は梨香の頬をぶつ。梨香は泣くのを必死に堪えている。泣いたりしたらもっとぶってやる。梨香は健気に涙を飲み込む。いい気味だ。私を怖がらせたりするからだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加