愛妻弁当

昼休みにお弁当を

　俺の浮気がばれて、妻は激怒している。
　俺は平謝りしたが、妻は口もきいてくれない。
　でもちゃんと俺のために今日もお弁当はつくってくれている。
　やはり俺に惚れていて、さっそく許してくれたのかもしれない。
　昼休み、俺は職場の机でお弁当箱を開く。

　いただきまーす、もう浮気なんてしませーん。

　心の中でつぶやきながら、お弁当箱を開けてみる。

　お弁当箱には一匹の死んだゴキブリが入っている。
　腹を見せたゴキブリの死骸しか入っていなくて、俺はしばらくゴキブリの死骸を見つめる。
　俺もこうなるぞ、という妻からのメッセージかもしれない。
　お前なんてゴキブリ以下だ、という妻からのメッセージかもしれない。
　俺はそっとお弁当箱のふたを閉めて、逆流してくる胃液をこらえた。