夜のコント

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従業員スペースにはないようだ。誰も煙草を吸わなかったし、あったとしても使い古しだろう。やはり新品が欲しいところだ。小人は警戒を怠らないようにしながら、明るいほうへ向かって進んでいった。 レジの内側に出た。小人の視界から見ると、まるで深い谷底にいるような眺めである。片方にはカウンターがそびえ、もう一方にはキャビネットがそそりたち、その上へさらに煙草の陳列台がのっかっていた。 ライターは煙草の傍にあるはずだ。まとめ買いをした客に、おまけとして一個渡している。それがいつもカウンターの裏の棚に、いくつか置いてあるのだけれども、今日はあいにく見当たらなかった。 補充するのを忘れているのだろう。そうすると売り場の方へ取りに行かなければならないのだが、道のりはなかなか険しい。 まずカウンターが立ちはだかっている。商品の陳列棚とは違って、床との間に隙間がないから、下を通り抜けていくことはできない。小銭が落ちて潜りこむのを防ぐためなのだろうけれども、小人が潜りこむのを防ぐ為にも役立っていると言える。 そうすると回り込むか、乗り越えるかのどちらになる。すると小人は迷わずに、カウンターを上り始めた。棚板に手をかけて、鉄棒の逆上がりの要領で、足を先に持ち上げていく。普通に考えると回り込んだ方が簡単そうなので、小人も最初はそちらを選んでいた。けれどもフロアには何もなく、身を隠すことができないので、何度か危うい目に遭ったのだ。 カウンターの天辺に着いた。レジスターの周囲には、揚げ物の保温機や、小銭で買える菓子などが陳列してある。カウンター前にもテーブルが設置してあり、細々とした商品が並べてあったから、そこを伝って下へ降りるつもりだった。 小人は立ち上がろうとした。けれどもただならぬ視線を感じて、そのまま体の動きを止めた。
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