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商品は残り一個しかない。危ないところだったと思いながら、ライターを抱きかかえようとした時、またしても強い視線を感じた。
さっきの男にまた見られている。首を前にせり出すようにして、ライターにしがみついた小人と、お菓子コーナーのほうを何度も見比べている。さっき見つけた小人が動いたのかと思っているようだ。
男はライターをつかみ取った。そうして何度か小人ごとぐいぐい握り、試しに火を点けてみたりもしたが、やがて元のところに戻した。雑誌コーナーのほうへ去っていく。これもキャラクターグッズだと納得したのだろう。残り一個だったのも幸いしたようだ。
小人は大きく息を吐き出した。もう少しで窒息するところだった。少し息を整えると、すぐにライターを抱え直して、ねぐらへ向かって戻り始めた。
もちろん荷物が増えているぶん、隠れて移動するのも時間がかかる。シャンプーの容器を倒さないようにしながら進んでいると、品出しをしている従業員に、あの男が話しかけている。
「おい、店員さんよ。ちょっとレジを開けてもらおうか」
「はあ」
「金出せって言ってんだよ。こいつを使われたくなかったらな」
そう言う男の手には、リレー競争のバトンを束ねたようなものが握られている。それぞれの棒の先からは、こよりみたいなものが伸びていた。それを見た店員は、ひどくうろたえながら言った。
「まさか、あの爆弾魔……」
「知ってくれてるようだな。もしちょっとでも抵抗しようとしたら、導火線に火が点くことになる」
と、ポケットから使い捨てライターを取り出した。そうして脅すように発火しようとしたらしいが、発火装置を押してもあいにく火が点かない。
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